FXは、為替差益のトレードで稼ぐ以外にスワップポイントで稼ぐ長期投資も人気です。
毎日コツコツと金利差額が受け取れるのでリスクが低いと考えられがちですが、高金利を実施している国の通貨は暴落リスクがあるリスク資産です。
毎日スワップでコツコツ稼いでいても、ある日暴落して一日でロスカットされてしまったなんてことにもなりかねません。
本記事では、高金利の新興国通貨が暴落した事例をもとにスワップ投資のファンダメンタル分析の重要性を解説しますので参考にしてみてください。
この記事の目次
新興国通貨とは
新興国通貨とは、成長の初期段階にある国(エマージング諸国)の通貨を指します。
日本やアメリカやイギリスといった経済大国は該当せず、現時点で成長の初期段階、つまりまだ経済が未発達な国を指します。
例えば、下記が代表的な新興国通貨です。
ブラジルのレアル、ロシアのルーブル、インドのルピー、中国の人民元、南アフリカのランド、メキシコのメキシコペソ、マレーシアのマレーシアリンギット、インドネシアのインドネシアルピア、タイのタイバーツ、チリのチリペソ、トルコのトルコリラ、ポーランドのポーランドズロチ、フィリピンのフィリピンペソ
新興国は高金利の通貨が多くスワップポイントを目的とした投資に適しています。
例えば、アメリカの金利が2022年1月時点で0.25%なのに対し、トルコリラでは14.00%の高金利がついているのです。
FXでは2国間の通貨の売買をするという性質から、通貨ごとの金利差額を受け取れるようになっており、新興国通貨の人気が高い要因とも言えます。
しかし、ロングかショートかでスワップを受け取れるか支払う側になるかは変わるので、やみくもにトレードするのではなく為替の変動リスクを押さえておくことが重要です。
金利を上げる理由
新興国が高い金利水準にあるのは、外貨獲得が目的の1つです。
銀行にお金を預けると考えたとき、金利の高いA銀行と金利の低いB銀行があれば、みんなA銀行の方にお金を預けるでしょう。
これは国の話でも同じで、新興国は金利を上げて外貨の獲得を目的としています。
成長段階の国は国内での経済を活性化するために、国外からの外貨を欲する傾向にあります。
また、通貨の暴落危機などを回避する際にも有効です。
しかし、経済大国が金利を大幅に上げないのにも理由があります。
金利が上昇をすると、金融機関が以前よりも高い金利で資金調達をしなければならなくなり、企業や個人への貸し出しにおいても高い金利を付けなければなりません。
その結果、企業や個人が資金調達をしにくくなり、経済活動が抑制されてしまうというデメリットもあります。
新興国であっても国が金利を上げたり下げたりするのは、経済状況に合わせた動きがあるものと認識しておきましょう。
新興国通貨が暴落するタイミング
次は、新興国通貨が暴落するタイミングについて解説をします。
新興国通貨に投資をする際は、以下で紹介する為替変動リスクを押さえておかなければいけません。
仮にスワップ投資を目的としていた場合でも、通貨が暴落をしてしまえば為替の損失がスワップを上回ってしまう恐れがあります。(というか余裕でそのような状況になり得ます)
また、USD/JPYやEUR/USDなどのメジャー通貨に比べて、新興国通貨の変動は激しいのでなおさら注意が必要です。
過去事例と共に見てみます。
トルコリラ円の暴落事例
下のチャート画像は、TRY/JPY(トルコリラ/円)2021年11月~2022年1月までの動きを週足で示したものです。
瞬時に暴落が発生している事が分かります。
10月後半では13円台を推移していたのですが、12月には6円台とおよそ50%以上の下幅を記録したのです。
この背景には、アメリカの金利利上げの示唆が影響しているとされています。
アメリカでは、長い間金利の上昇はないと考えられていましたが、2022年より数回の利上げをする可能性が示唆されました。
もちろんトルコリラの方が高い金利水準ではありますが、安全通貨とされている米ドルと変動リスクの激しいトルコリラであれば米ドルの方が圧倒的に人気があるのは当然の事です。
金利差はあっても安全資産を選ぶ投資家が多く、トルコリラの暴落を引き起こしました。
また、この時期はブラジルやメキシコなどが利上げの示唆をしたにも関わらず、トルコだけ逆行して利下げの示唆をした事も要因の1つです。
通貨の力が強いアメリカのような国の利上げ情報が出ると、このように新興国通貨は暴落を招く可能性があります。
アジア通貨危機
2つ目の事例で紹介するのは、1997年~1998年に起こったアジア通貨危機です。
有名なニュースでもありますが、このアジア通貨危機は1つの国の通貨危機がアジア全体に広がっていった問題となっています。
事の発端はタイで、タイの通貨であるバーツは当時「固定相場制」を採用している通貨でした。
海外からの資金流入によるバブルの時期であったのです。
その結果、タイのバーツがアメリカのドルよりも過大評価を受けており、タイの経済先行きを懸念したファンドが一斉に空売りを行いました。
その後、通貨が急激に下落してしまい、タイだけではなく周辺のアジア各国も同様の通貨危機に陥ったのです。
このようなケースは歴史的なものとしてではなく、今後も起こりうるケースです。
最終的にはタイ、インドネシア、韓国の3国はIMFからの支援を受けて立て直しています。
経済圏や周辺国の動向から巻き込まれるというケースは起こりやすいので、新興国通貨投資の際は周辺国の経済情勢も把握しておきましょう。
外貨不足による暴落
2001年には、南米のアルゼンチンで通貨危機が起こりました。
アルゼンチンでは、1990年より経済収支の赤字補填のため外貨需要が増え、海外市場での外貨獲得を背景に経済活動が順調に推移している状態でした。
しかしその後1998年を境に外貨の流入高が減少して、翌年2000年には経済収支赤字を補填しきれなくなってしまったのです。
その結果外貨不足に陥り、経済不況に陥ることになりました。
高金利を外貨流入目的で進めていた国でも、政策の失敗や経済収支の赤字拡大で外貨不足になる通貨が暴落するケースもあります。
新興国通貨の動向はファンダメンタル分析も重要
本記事で解説したように、新興国通貨は経済状況や国の政策等によって暴落を招くケースがあります。
全て過去の話ではなく、今後も起こりえるケースとして考えておきましょう。
新興国通貨の動向を見る際は、ファンダメンタルでの分析が重要となります。
周辺国の経済状況や、アメリカやEUといった経済大国の動向、国ごとの政策などが起点となって動くケースが多いです。
スワップ投資をする方は、マーケット情報をしっかり読み取った上で投資をしましょう。
レバレッジをかけて行うFXの長期投資では、暴落の際にロスカットになる可能性もあるので、リスクも考慮しながら投資していくことが重要となります。
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